私が小さい頃から考えている「執筆業」は、想像力と表現力と語彙センスで読み手を魅了する芸術家、というイメージです。
この本は、ライターという漠然とした「センス」の世界で、自分のような人間が努力する方法を知るきっかけとなりました。
今すぐに実践したいと思える、機動力に溢れた本
著者の佐藤由美さんは日本初のヘアライターであり、書籍ライターやエッセイストとしても第一線で活躍されています。
手に取ったきっかけは題名です。書く仕事がしたい…ライターや小説家、エッセイスト、どれにも気後れがしている自分にとって、とにかく"文章を書く仕事"に食らいつきたいという気持ちを受け止めてくれそうに感じました。
この本は表紙にも書いてあるように、文章術の本ではありません。書く仕事をするにあたって、書く以外のことに焦点を当てた本です。
・書いて生きていく人生とは、どんな人生か
「書く仕事がしたい」p.5
・書く仕事には、どんな種類があるのか。どれが自分に向いているのか。
・いつ、どんな場所で働き、いつ休むのか
・どのように仕事をもらい、どれくらい書けば生計が立てられるのか
・この職業のキャリアパスはどうなっているのか。何歳まで働けるのか
・生活(たとえば結婚や出産やパートナーの転勤)と仕事はどう関係しそうか
佐藤さん自身がライターを始めた頃に知りたかった、書く仕事そのものについて、佐藤さんの経験に基づいて書かれています。
ライターをしている中で、それなりにさまざまな文章術の本を読みましたが、この本はまさに今自分の置かれた境遇にグイっと一歩踏み込んできてくれました。
この本はとにかく書いている内容が具体的です。
このテーマについて、私(筆者)なら○○に行って、○○を読み、次に○○に目を通し、○○をする
というように成すべきことが超具体的に書かれているので、私はまず読んでそのまますぐに真似をしました。
ライターが仕事を取り続けるための、「編集者に企画を提供し続ける」というアイデアも、編集者への伝え方やそのシチュエーションまで書いてくれています。
良い仕事の仕方を身近で見れるから、「尊敬できる人と働け」とよく耳にします。この本はまるで、一流ライターの仕事の様子を見学させてもらっているような高揚感を感じることができました。
アドバイスもこれまた具体的だから、刺激を受けてそのまま行動したくなる機動力に溢れた本です。
書く仕事をするために、努力できる方法
この本では、「ライターは書く専門スキルを持ったビジネスパーソンであり、作家や小説家のようなアーティストである必要はない」と伝えています。
印象に残ったのが、さとゆみさんがライターとして長年コンプレックスに感じていた「明るくて屈託がない」ということです。
周りを見渡しても、作家や小説家の友人たちは深い内省のまなざしを持っていて、とても繊細な感性の持ち主が多いです。ハイジかクララで言うと、圧倒的にクララタイプが多い。でも、私はというと、なんというか「物書き」になるには性格が明るすぎて、感性が大味すぎる。
「書く仕事がしたい」p.320
この章でさとゆみさんが言いたい大切なところは、恐らくここではありませんが…私が常日頃自分に対して不安に感じていたことだったので、少しほっとしました。
さらに、文章を書いて原稿料をもらうプロになるために必要な条件を、本ではたったひとつと言っています。
「文章を書いて原稿料をもらう人になる」と決めること
「書く仕事がしたい」p.44
いかに自分が書き続けられるか、向き合い続けられるか、一番根底にある大切なことのはずなのに、言われるまで理解できていませんでした。
この言葉を読んで、はっと気づかされました。
美しい語彙力や劇的な比喩表現、はたまた人と違った発想力。もちろんそれらがライターにとって、重要な要素であることは間違いありません。
しかしそこにたどり着けていなくても、あきらめる前にすることがある。書く仕事をするためにやるべき努力の仕方がある。この本を読んでそう考えることができました。
ノウハウより、体験談が聞きたいときに
もちろんとっても参考になる本ですが、ノウハウ本ではなく、エピソード集のような一面も備えています。
飲み屋で友達の近況聞いて、「よーし、私も頑張るぞ!」っていう活力がみなぎるような…(そんな親近感を持てるような方ではないのですが)
「行ってこい!!」と勢いよく両手で押されて、駆け出したいときに読む本です。
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